植え替え(2) (樹格向上)

樹の左右よりちょっと小さめの鉢を選ぶ
植え替えは雑木で2~3年に一度、松柏で3~4年に一度くらいです。一度植え替えしてしまうと、その後数年はその状態、その鉢のままで毎日顔をつきあわすことになります。若い素材でも1年に一度が精一杯。それだけ慎重に検討し、失敗なく植え替えなければなりません。 鉢合わせのポイントは、樹の左右よりちょっと小さめの鉢を選ぶことです。小さめの鉢のほうが樹が締まって見えるというのが大きな理由ですが、鉢からはみ出すことで、樹の向こうに見える景色がより広がりを持つという効果もあります。でも、小さめの鉢に植えたため水切れを起こしたり、根が納まらなかったりしては困りますから、上部の枝の出来ぐあいに合わせて徐々に鉢を小さくしていきます。 水を吸収するのはほとんど根の先端部だけです。狭い鉢の中で太い根が幅をきかしているよりも、細かい根がいっぱいあった方がたくさんの水を吸い上げることができるわけです。鉢小さくなればなるほど、たくさんの根岐れが必要になるので、植え替えのたびに切り込んで小根を増やしながら鉢を小さくしていくことになります。 例)黒松・模様木 樹の左右がはみ出すくらいの鉢を選ぶと、大木感が出る
植え付け位置を変えれば樹は変貌する
植え付け角度を変えるだけで、ごろっと様変わりする素材はたくさんあります。また、ちょっと植え付け角度を狂わせてしまったために、せっかくの魅力を半減させてしまうこともよくあります。ですからプロの植え替えを見ていると、とても慎重に植え付け角度を決めていることがわかります。 改作や針金かけの場合でも、最初に正面を決め、植え付け角度を検討し、その構想に合わせて枝や幹を操作します。植え付ける際にも、おもりをぶら下げたり、印をつけたり、構想通りの位置に植え付けることができるよう気を配ります。 また、一度決めた植え付け角度であっても、その後の樹の変化を見て、もう一度考え直すことがあります。正面や植え付け角度は永久不変のものではありません。 素材を手に入れるときも、植え付けを変えればどうなるかなどの幅広く想像力をふくらませば、思わぬ拾いものが見つかるかもしれません。       作業前 改作作業前のそなれ。このままではコケ順も動きもないので、植え付け角度を変えて魅力を発揮させたい       幹を倒して半懸崖の樹形にする構想。一見奇想天外のようだが、わりとよくある構想。うまく決まれば効果は高い           作業後 「こんな樹だったのか」と驚くほどの変貌。頭をやわらかくして、いろいろな角度を検討してみると、これまで気づかなかった樹の新しい表情を見つけることができる  

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