枝を切り込む作業適期は3月下旬頃。でもこれは休眠期の剪定適期であり、本当は年間に何回も剪定するチャンスがあります。直射日光で傷みやすい真夏、それに凍結が心配な真冬を除けば、ほとんど年中剪定できると考えてもよいでしょう。水やりの時はいつもポケットにハサミを入れておく、それくらい剪定の頻度は高いものです。
そこで大切なのが、よく切れるハサミを使うこと。たとえば病院で手術を受けるとき、錆び付いたメスより切れ味の良いメスで切ってもらった方が傷口の治りが早いのと同じように、幹や枝を切る時も、よく切れる刃物を使うというのが基本です。
そのため、プロの盆栽屋さんのところでは、作業前によくハサミを研いでいます。作業の途中でも、ちょっと切れ味が鈍ればすぐ砥石を取り出します。料理人の世界と同じように、持っているハサミの切れ味で、仕事ができるかどうかが判断されてしまうくらいです。
たったひとつの芽や、小さな芽あたり(そこから芽が吹き出すだろう目印)に注目し、伸びる芽の方向や長さなどを予測しながらハサミを入れるのは、おそらく盆栽だけでしょう。ひと芽に対するこだわりが樹形の完成度を高めてくれます。
でも芽にばかりとらわれていては樹形がつくれません。一歩下がって全体のバランスを見渡しながら、しかもひとつひとつの芽にまで気を配ってハサミを入れる。これが盆栽のせん定方法です。
樹種によって芽の出方が違い、剪定の方法も異なってくる。例えば1節だけ残して切った場合、対生の樹種なら2芽が伸びるが互生のものは、1芽しか伸びない。輪生する樹種は早めに芽を整理しないと、芽もとがコブになりやすい