た行
鉢の縁よりも全体的に盛り上げて樹を植え付けること。培養上の利点として、(大気にさらされることにより)根張りに古さが出る点が挙げられるが、水切れ・乾燥などの問題もあって、管理はやや難しいと言える。植え替えの際に根捌きが足らなくて高植えになってしまうことがあるが、これは避けたい。
盆栽を下から見ていって幹の始まる部分。広義では、根張りを含めた最下部を指すこともある。大変重要なポイントで、この部分に十分な太みがあれば、ドッシリとした重厚な落ち着きが備わり、大木感の表現につながる。幹のコケ順の基準にもなる。
枝や幹の長さ・形に問題があって、先端部分を作り直したい時、新しい樹芯や枝芯を途中の枝に設定して切り換えることをいう。具体的には、新芽や小枝を新樹芯や新枝芯に決め、そのすぐ先の部分で切除する。特に胴吹き(幹肌に新芽が吹くこと)が可能な樹種であれば、立て替えだけで作っていくこともあり、これによって間伸びのない締まった樹を作ることができる。
箱型に作られた棚卓を用いて、いくつかの樹や添景、添え草などを飾ったもの。小品盆栽はこの型で飾られるものが圧倒的に多い。
ここでいう『棚』とは樹の枝棚のこと。枝が幾層にも重なってできた枝棚をきれいに整理・ブロック化し何段かに分けることを指し、「棚割りがきれいにできている」などと用いられる。階調をつけることで樹形全体にメリハリをつけ、弾みを生み出す。また美観以外にも樹の内部への日当たり・風通しを良くする目的がある。
肥料を練って玉状に固めた緩効性有機肥料で、肥料当たりが少なく、盆栽の培養に最も多く用いられる。原料には油粕や骨粉が主に用いられている。水やりの度に成分が少しずつ溶け出して鉢土内に入り効果を発揮する。形の崩れやすいものは、降雨時などに流れ出て、結果的に肥料のやりすぎとなるので注意。現在は良質のものも多く市販されているので、よく調べてから購入したい。
文字通り短い枝のこと。枝には、よく伸びた枝(徒長枝)・その年伸びた枝の基部付近から出る生長の少ない枝(短枝)・その中間の枝(中枝)があり、短枝は組織が充実していて、花芽や実が結実しやすいという性質がある。特に実もの樹種の一部ではこの短枝にのみ花芽を持つものが多いので、枝づくり過程で短枝を多く残すことを目指したい。
→【芽切り】
樹形の一つ。字義通り、幹が真っ直ぐ天に向かって伸びている形。整然とした美しさは大きな魅力である。八方根張りやコケ順・枝順など、盆栽の基本要素がすべて求められ、ごまかしのきかない樹形と言われる。下枝が弱らないよう、また、太い枝の元部を膨らませないことが樹づくりのポイント。
特に実生素材の場合、種子から初めて真下に伸びた根のことを指す。この根が下に伸びる力で幹は高くかつ太くなるが、盆栽として鉢内で育てる際は不要になるので、一般的には早い段階で切除する。伸ばしていると横根(ひいてはこれが根張りになる)に力が行き渡らず、枝づくり・樹形づくりが難しくなる。
苗木を数本から数十本、互いの根元をくっつけて植え込む方法。各苗の太りとともに根元の癒着を経て、株立ち風・多幹樹形風のものを作る目的がある。
一般的には繁殖法の一つということになるが、盆栽づくりの上では大変重要なテクニックで、繁殖や枝作り、さらには根張り作りにまで応用できる。一口に『接ぎ木』といっても、様々な目的や方法があるので、ここに挙げる。 ●枝接ぎ・芽接ぎ フトコロ部に枝が欲しいが、追い込める芽がない場合など、枝や芽を接ぎ穂にして芽を得る ●根接ぎ 良い根張りを得るために、根張りの足らない部分に接ぐ ●呼び接ぎ 接ぎ穂にする部分を母木から切り取らず行なう接ぎ木。活着の難しい樹種(もみじなど)に用いられる ●通し接ぎ 幹に穴を開け、接ぎ穂を通して活着を待つ方法。樹種(もみじや楓など)や時期(5月下旬~6月上旬)を選ぶため、あまり一般的ではない その他、葉性や品種を変えたいときや繁殖法としてなど、接ぎ木の応用範囲は広い。接ぎ木で繁殖された素材は、花や実の着くのが早くなる。
接ぎ木を行なう際、接がれる方の木を台木、接ぐ方の木を接ぎ穂と呼ぶ。樹勢旺盛な部分から採るのが鉄則。新しい枝や根張りになるわけだから、とにかく傷がなく、しっかりした芽を持つものを選ぶこと。
幹や枝の途中に芽が吹くこと。特に枝元(盆栽のフトコロ)近くから新しく芽が出ることをいう。枝を追い込む剪定によって促す。胴吹きが得られれば、間伸びした部分に新しい小枝を作り、枝順やボリュームのバランスを作り直すことができる。樹種によって胴吹きしやすいもの・しにくいものがある。また、追い込みの剪定には樹勢の良いことが必要不可欠。
伸びたままの、勢いの強い枝のこと。徒長枝をそのままにしておくと、樹の養分がそこへ流れすぎるため他の枝の生長が遅くなる。養成中の樹や、枝・幹に太みを得たい場合は犠牲枝としてこれを放置することもある。いずれにしても組織の成熟を伴わないまま太っていくので、花芽などは結実しにくい。
芽と芽、枝と枝の間隔が広すぎること。「この部分は飛んでいる(枝順から考えるとここに芽・枝があるべきなのだが、ない)」などと使われる。
樹や枝の先端部にある生長点を除去すること。簡単に言えば枝を切ることを指すが、単に輪郭線を整えるためではなく、枝の立て替えや、実もの盆栽などで結実を確実なものにするために枝を短い状態にしておく、というニュアンスが強い。
幹を削って養分の通り道を遮断することで強制的に木質部に発根させ、その根の下部で切断、上の部分を植え込んで使う繁殖方法。盆栽の素材を得るために大変重要なテクニックで、改作にも活用でき、特に小品盆栽では取り木で作られた名品も多く見られる。樹種により適期は違うが、均等な根張りが得られるところと、模様・幹肌の良い部分だけを選択できるというのが最大の魅力である。