3. 先代の蓄積を活かし、花開く結晶釉
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陶あん4代目・土渕善亜貴氏。

 

土渕氏作・曜変天目香炉。再現不可能とされてきた曜変天目だが、通算3,000〜4,000通りもの釉薬の調合を試したほか、焼成温度や酸素濃度を調整できるように窯を2回作り直すなど試行錯誤を重ね、ついに再現に成功。大きな話題となった。

 

曜変天目を研究する過程で生まれた、多種多様なオリジナル天目釉作品。これらは本店の道向かいにある「gallery 土渕善亜貴」に展示されている。

 

 

先代の蓄積を活かし、花開く結晶釉

陶あん4代目・土渕善亜貴氏は1980年生まれ。2003年から家業に携わり、2010年に四代目当主に就任します。2008年頃から「結晶釉」に挑戦し始め、2018年には東洋陶芸史上最大の謎と言われる「曜変天目」の再現に成功。大きな注目を集め、第41回京焼・清水焼展で経済産業大臣賞(最高賞)を獲得、京都市から「未来の名匠」認定を受けるなど目覚ましい活躍を続けます。
土渕氏が4代目就任以降注力して開発した「結晶釉」は、釉薬の中に特殊な金属を混入し、それが溶けて冷却する過程で結晶が出る特性を活かした磁器作品です。もともと19世紀に欧州で発見され、セーヴルやマイセンといった欧州の磁器焼成の地で作られていたもので、日本には明治期に導入されましたが、当時の技術では歩留まりが極端に悪く、商品としての流通はほとんどありませんでした。
釉薬の調合、施釉の厚さ、焼成時の温度など、どれか一つでも違うと思い通りに作れず、歩留まりで言えば普通に焼いて2割取れれば上々。そんなところから開発が始まったそうです。
3代当主が長く続けた釉薬の研究成果を下地とし、幾度も実験を繰り返して研究を続けました。3~4年後には徐々に成果が出て歩留まりも高くなり、商品化につながりました。現在は9割以上の歩留まりだとか。「3代の頃の技術や設備を引き継ぐ形で研究ができたので、比較的短期間でやれました」と土渕氏は語ります。

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