花結晶……陶あんオリジナルの釉薬で、混入された酸化亜鉛が透明釉の中で花弁状に溶け出し、まるで花が咲いたかのような美しい文様が浮かび上がる。左上から、白花結晶、黄花結晶、青花結晶、瑠璃花結晶。
星結晶……星形で虹色を呈する結晶釉薬。タングステンによる結晶で、濃色の釉薬に用いると結晶釉の虹色が引き立てられ、星形の紋様が際立つ。左から、辰砂釉星結晶、黒釉星結晶。
緑にはチタン、紫にはコバルトを混入することで変化に富んだ結晶釉が生まれる。左から、緑結晶、紫結晶。
結晶釉のバリエーションと「花結晶」の難しさ
現在、「平安泉山」ブランドの盆栽鉢で展開される結晶釉は合計8色。結晶釉は普通の釉薬に金属を入れることで変化をつけるものですが、釉薬によって入れるものが異なり、黄・瑠璃・白・青の「花結晶」には酸化亜鉛、紫にはコバルト、緑にはチタン、そして黒と辰砂の「星結晶」ではタングステンを混入させます。結晶の出方も1枚ずつ違うので、量産品とは言え一点もののような価値を感じさせます。
中でも特に難度が高く、それだけに市場で人気を博しているのが「花結晶」。陶あんオリジナルの釉薬で、混入された酸化亜鉛が透明釉の中で花弁状に溶け出し、まるで花が咲いたかのような美しい文様が浮かび上がります。
この「花結晶」ほど厳しい管理が必要な技法はなく、焼成時の温度調節は極めてシビア。上限の一番熱がかかるところで融点にピタッと合わせることが大前提で、しかも目標の温度までただ単純に上げるのではなく、最高点までどれほど時間をかけて上げるか、また焼成後の冷却の時間をどうとるかなど、様々な要素があります。それには窯内の厳密な温度管理が必須で、特殊な温度計を用いて1度単位で測定するようにしました。窯自体も通常とは違う組み方をして、窯内の位置で温度ムラがないように調整されています。普通なら気の遠くなるほどの膨大なパターンを試し、焼成後の仕上がりと数値を照らし合わせて修正を繰り返して、釉薬ごとに専用のプログラムを磨き上げたのです。