2021年1月の第16回現代小鉢作家展において、公益社団法人全日本小品盆栽協会理事長賞(釉薬の部)金賞を獲得。花結晶の輝きは、従来の釉薬盆栽鉢の世界に大きな衝撃を与える新領域のものだった。各・17×16×6㎝。
実用例:平安泉山瑠璃花結晶木瓜式鉢(獅子頭もみじ)
実用例:平安泉山紫結晶木瓜式鉢(橘もどき)
「平安泉山」ブランド鉢の誕生
こうして生まれた「花結晶」の食器類が商品化されると、たちまち大きな話題を呼び、発表して数ヵ月後には製造が追いつかないくらい発注が入りました。この技術を確立した成果は大きく、やがてその応用で様々なタイプの結晶釉が生まれ、「陶あん」全体の技術力向上につながりました。
これらの結晶釉が完全に技術として確立し、商品としてどんどん出されていた2019年頃のこと。近代出版で鉢の仕入れに携わっていた同社社長・徳尾隆次が土渕氏とお会いする縁があり、まずは当時人気が高騰していた絵付鉢を発注。その際に訪れた陶あん本店ショールームで「花結晶」に魅せられ、従来にない結晶釉の盆栽鉢を目指し、制作を依頼したのです。
数ヵ月後に徳尾が手にした仕上がりは素晴らしく、2021年1月の第16回現代小鉢作家展に出品したところ、釉薬部門で金賞を獲得。偶然にもこの年の釉薬部門は上位3賞が全員結晶釉でしたが、陶あん窯の安定した技術力には他の作家からも感嘆の声が挙がったほどです。
これをきっかけに「平安泉山」という陶号での販売開始に至りました。「泉山」は泉涌寺の山号の一つで、この周辺に地名として残るもの。この企画を立ち上げた徳尾が、じつは幼少時にこの地の「泉山幼稚園」に通っていたこともあり、思い出深い地名を陶号に採用し、新ブランドの展開が始まったのです。