沈壽官窯色絵草花文長方鉢 16×12×5㎝
沈壽官窯色絵草花文楕円鉢 16.5×12.5×5㎝
一流品はローカルから
当代沈壽官氏は、十二代が皇居に献上した盆栽鉢について、ある感慨を覚えたそうです。
「面白いのは、明治期の輸出品と全然違うタイプということです。欧州に受けるエキゾチックで絵画的な絵付ではなく、文様的で楚々とした感じ。地肌を活かす、白薩摩本来の良さがあるよね」。
十二代は藩の窯を指揮して欧州輸出品を大量に作り、薩摩焼の名を世界に広めた立役者として知られます。しかし当代曰く、沈壽官窯にとって明治初期の万国博覧会での主眼は、白薩摩ならではの素地を見せることでした。隙間なく絵が描かれた欧州好みのジャポニズムに完全に迎合したわけではなかったのです。
近年、当代は「上質なローカルを、高度なアナログで」と繰り返し発言されています。どこでも再生産できるものに人は価値を見出さない。その地でしかできない、この集団でなければできないという絶対的な仕事=ローカルこそ、世界が認める一流品を生む場所となる。ごくローカルな「沈壽官の白薩摩」という作風が、今回、時を超えて蘇ります。
輸出用でなく、薩摩焼本来の上品な文様使い
令和3年、ある筋から沈壽官窯への特注により、新たな盆栽鉢作品が完成しました。生まれたのは、盆器としての実用面を考慮した長方鉢・楕円鉢の2種です。当然成形は丸鉢よりも難しく、縁の張り具合や足の位置など細部にわたって色々な試行の末に出来上がったもの。ボディ側面は垂直に立つ形で、絵が際立つように工夫されています。絵付は明治期の海外輸出用の絵ではなく、薩摩焼本来の歴史に根ざした上品な文様使い。十二代による献上品のような作域を見せる逸品です。
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