植え替え直後の樹は根が切られた分だけ水上げ量が低下し、鉢土の乾きが遅くなります。他の樹と同じように水をかけると用土の乾く暇がなく、水もたれをおこしてしまうので、潅水サイクルを遅いめにするなどの調節が必要です。
逆に、水通りがよくなって急に乾いてしまうこともあるので毎日乾き具合をチェックします。乾いた風に当てると葉からの蒸散量が増え、根からの水上げが追いつかなくなり、傷んでしまうこともあります。植え替え後2~3週間くらいはあまり風の当たらない、それでも日当たりのよい場所に置いておくほうが安全です。
3月〜4月の管理レシピ
2月から3月にかけては剪定作業の適期でもあります。太枝を切断した跡は、 形成層 (樹皮と木質部との間の薄い層)の切り口をきれいに削り直し、 肉巻き しやすいように処理しておきます。
傷口の 肉巻き が盛り上がるとコブ状になって醜いので、あらかじめ切り口を平らに削り直しておかなければなりません。 松柏類の場合は 肉巻き に時間がかかるので、枝元を長めに残して切り、 ジン にしてしまうことが多いようです。すぐ ジン にするのではなく、しばらく樹皮をつけたまま残しておき、ある程度ヤニがまわるのを待ってから削って ジン にしたほうが、堅牢な ジン になります。 切り口が乾燥して灼け込んだり、細菌などが入らないように、 癒合剤 (カットパスターなど)を塗布しておきましょう。殺菌剤(トップジン・ペーストなど)を塗ってから 癒合剤 を塗布しておくと、病菌予防に効果があります。
樹種別作業・管理ポイント
五葉松の植え替えは春の彼岸前後が最適期です。できれば針金かけなどの作業から1~2週間ほど置いてから植え替えるほうが、少しでも樹の負担を軽減することができるでしょう。植え替えない樹でも、汚れたり風化した表土だけは新しくしておいたほうがよいでしょう。これだけで水の通り具合がずいぶん変わります。
ほかの樹種に先駆けて芽を開きはじめます。萌えだしたばかりのやわらかな新芽が霜に当たると、芽を傷める結果となりますので、放射冷却で霜が降りそうな日には、前日から軒下などに取り込むようにしましょう。
古枝を 挿し木 したものは、根が出るまでの間、 葉水 を中心に与えます。挿し床を四六時中びしょびしょにしておくと発根率が低下するので、用土は乾き気味にして、フレームなどの中で空中湿気を保つようにします。
黒松 | 3月下旬~4月上旬が植え替え適期。剪定・芽接ぎもこの時 |
五葉松 | 植え替えは3月下旬~4月下旬が適期。針金かけ可能 |
真 柏 | 整姿・剪定が可能。ただし新芽が動き始めたらいっさいさわらない |
蝦夷松 | 乾燥に弱いので北風を避けておく。霜と水切れに要注意 |
赤 松 | 小枝の針金かけ可能。植え替えは3月下旬~4月中旬まで |
杜 松 | 作業は避けておく。水切れに要注意 |
杉 | 急に乾燥することがあるので水切れ注意 |
山もみじ | 3月が植え替え適期。完成木は芽が開いたらすぐ芽つみに入る |
楓 | 芽がふくらみはじめたころが植え替え適期。乾きが早くなるので水切れ注意 |
けやき | 芽動き前に植え替えておく。枝元を縛っておいたものは外しておく |
ぶ な | 芽動きは他樹種よりやや遅いが、3月中に植え替えておく |
いぼた | 3月中に植え替える。剪定と挿し木も3月が適期 |
梅もどき | 3月中旬くらいから芽が動きはじめるので、それまでに植え替えを終える |
かりん | 2月中に植え替えを済ませ、軒下へ。芽出しが早いので特に霜に注意する |
ピラカンサ | 3月上旬~中旬に植え替える。植え替え後は霜に合わさないように注意する |
姫りんご | 2月下旬~3月下旬の間に植え替える。剪定も3月中に終わらせる |
つる梅 もどき |
芽がふくらみかけたら植え替えの適期。霜に当てないよう注意する |
老爺柿 | 芽動きは遅い。2月下旬以降に植え替え。剪定・針金かけもできる |
まゆみ | 3月中旬~下旬に芽動きをはじめる。植え替えはそれまでに |
くちなし | 寒さに弱いので、ムロ出しはゆっくり。雨の日に軒下に移し、徐々に外気に慣れさせる |
きんず | 寒がる樹種なので、ムロ出しはよく観察しながら段階的に |
美 男 かずら |
日当たりのよい場所に置いておく。植え替え後は風を避ける |
さつき | なるべく3月前半に植え替えをすませ、表土に山苔を張り、軒下で霜除けする |